ソフトバンクグループは23日に、自己株式取得と負債削減のため最大4兆5000億円の資産売却や資金化を行うことを発表しました。そこで自社株買いと今後のソフトバンクの注目ポイントについて考えて行きます。
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ソフトバンクGの自社株買いニュース概要
ソフトバンクG、最大4.5兆円の資産売却 自社株買い2兆円追加
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020032300622&g=eco2020年03月23日 時事ドットコムニュース
- 1年かけて2.5兆円の自社株買いを行う
- 中身は未定だが4.5兆円の資産を売却する
- 計2.5兆円の自社株買いは創業以来で最大規模
- 社債の買い取りなどを行なってバランスシート改善
自社株買いとは何か
自社株買いとは市場に売り出した自社の株を自社で買い戻すという言葉そのままのことを言います。
今回、ソフトバンクの2.5兆円規模の自社株買いというのは規模としては非常に大きいですが、自社株買いそのものは様々な大手企業で実施されています。
2019年には日本の企業内で10兆円の自社株買いが行われました。
自社株買い、19年度10兆円突破へ 投資より株主還元
上場企業の自社株買いが加速している。2019年度は年度として初めて10兆円を突破する勢いだ。米中対立などで景気に先行き不透明感が漂い、成長に向けた投資に踏み切りにくいなか、稼いだ資金の振り向け先として自社株買いを選ぶ構図だ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50367220Z20C19A9MM8000/
日本経済新聞 2019/9/30
- 自社の株が安いと判断しているとき
- 自社の資産を意図的に小さくするため
- 長期株主を優遇して利益を得てもらうため
株の売買の基本構造は以下のような図の流れになります。
この基本構造を元に自社株買いを解説すると以下のようになります。
普通は、一部の大量に株を保有する筆頭株主の人や会社がありますが、多くの一般投資家が多くの株を保有することになります。
市場に出ている自社の株を自社で購入するということで買いを入れます。
株を買い取ったことで企業が保有する株式の割合が増えることになります。
そして、保有する株式を消却していくことで、残りの企業株を保有する人たちの株の価値が相対的に上昇する形となります。
自社株の価格が安いと判断していると判断した場合は、自社株買いで株を取得して高値になったら売ることで利益を上げるということになります。
自社の資産を意図的に小さくするためというのは、この場合、買った自社株を焼却して、純利益を下げてROE(株主資本利益率)を上げることができます。
株の消却を行うことで、株主は何もせずに株を売らなくても保有しているだけで株の価値が上がり配当金などが上がることになります。
自社株買いのメリット・デメリット
- 需要と供給で決まるため、株価がUPする
- 焼却すると株の比率が高まり実質的に配当がUP
- 割安時に自社株買いして高値になったら売る
株主にとっては短期的なメリットが高いと言える
- 資金を投資に回さないため成長性が望みにくい
成長性が薄いということを投資家に示すため長期的には不利
多くの自社株買いの場合、2%~3%程度に止まることが多いが、今回のような大規模の自社株買いがどうなるのかは予想が難しい
ソフトバンクが何を売却するのか
ソフトバンクGとしては、資産が株主価格は25兆円くらいあるのに対して、株価が下落して時価総額が5.5兆円位まで落ちた状態で超格安価格になっていると主張しています。
そのため、自分たちでは25兆円の価値があると思っているのに5.5兆円になっているので安すぎるということで買いに入ったという構図です。
トヨタの投資規模が年間で1兆円とかなんで、その規模を遥かに凌ぐ金額を今回使って自社株買いを行うというのは異例ではあります。
しかし、個人的には本当なら高い時に売れば良いのに、この歴史的な下落時期に売りに転じるのは、明らかに売却せざるを得ない理由が何かしらあると考えています。
今回のソフトバンクG自社株買いの狙い
今回のソフトバンクGの自社株買いの狙いを個人的に考察すると以下のような流れではないかと考えています。
- ソフトバンクG筆頭株主の配当金と議決権を上げる
- 孫さんはソフトバンクGの22%を保有する筆頭株主
- 孫さんは株を担保に銀行から融資を受けている
- 株価が下がると担保割れするので株価を下げたくない
昨年からこれらのことを示唆するようなニュース記事も出てきています。
ソフトバンクG孫さんの保有株式、担保提供が増加-下落リスクも
ソフトバンクグループの創業者、孫正義社長は中国のアリババ・グループ・ホールディングなど新興企業に投資することで、1兆5000億円を超える個人資産を築いた。同社が投資する米ウィーワークが新規株式公開(IPO)を延期する中、孫社長が担保提供するソフトバンクG株式の割合が増加している。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-19/PY1YY3T1UM0W01
2019年9月19日 ブルームバーグ
この記事では、孫さんへの株の担保状況を示しており、2013年頃には16%程度を担保に入れていたのが2016年頃には35%まで引き上がっています。
2020年の時点では38%(6500億円相当の株を担保)辺りまで来ている状況なので株価が落ち込むと銀行から追証(追加で保証金)を迫られます。
もし、入れられないと預けている株を大量に売却される可能性があり、そうなると株価もどんどん下げ止まらなくなる状況で混乱をきたすことになります。
今後のソフトバンクGまとめ
- ソフトバンクGが保有している資産のどこの部分を売却するのか
- 5月決算の状況と踏まえて、自社株買いで株価をどこまで支えられるか
- ソフトバンクGの相次ぐ幹部の退陣から孫さんを抑制する人はいるのか
5月にはソフトバンクGの決算が行われるので、そこが1つの注目ポイントではないでしょうか。
ソフトバンクGは、投資会社なので投資先の企業が下落したりすると、大きな痛手にもなります。そのため、今回の米国下落やSVFやSprintなどが赤字に転落しそうですよね。
また、Appleが「iPhone」の発売時期を通常より数カ月延期する発表を検討していると発表していました。
5G対応iPhoneの発売、数カ月先送り検討 Apple
米アップルが次世代通信規格「5G」対応とみられている新型スマートフォン「iPhone」の発売時期を通常より数カ月延期する検討を始めたことが、サプライヤー関係者らの話でわかった。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57242590W0A320C2MM0000/
日本経済新聞 2020年3月26日
AppleがiPhoneの販売を延期するとなると、ARMなどは、iPhoneのプロセッサーなどを設計している会社なので、これも大きな痛手となり赤字に転落する可能性があります。
ソフトバンクの今やお荷物的な存在としてWeWorkがありますが、今回のコロナ騒動で更に売り上げが減少していくことが予想されると、立て直しそのものも苦戦しそうな感じにも見えます。
WeWorkに関しては、過去に記事にもしているので気になる方は見てみてください。
これらのことから、ソフトバンクGが抱える企業の多くが、赤字になることが予想されています。
そう考えると、5月の決算を見越して先手を打って株価を上昇させたとも見方も出来ます。
今回、ソフトバンクGが自社株買いをすると発表しただけで、その後、株価が上昇をしていたので、孫さんはその辺も狙っていたのか分かりませんが流石とは思います。
ソフトバンクGでは、多くの取締役などが退陣しており孫さんの経営方針を上手く補正しながら進めることの出来る相棒的な人がいないような感じもするので、その辺が今後、どのように影響してくるのかは個人的には注目しています。
最後までお読みいただきありがとうございました。