影響力の武器とは、なぜ人は動かされてしまうのかという視点で交渉事などに活かしていくことです。圧倒的な影響力を持ちたいと願う全てのビジネスパーソンに説得の技術を伝授します。
著者のロバート・B・チャルディーニ氏は、アメリカを代表する社会心理学者の一人です。
影響力の武器の要点は7つです。
- 人は「パターン」で動いてしまう
- 人は「恩」で動いてしまう
- 人は「約束」で動いてしまう
- 人は「状況」で動いてしまう
- 人は「好意」で動いてしまう
- 人が「力」で動いてしまう
- 人は「珍しい」で動いてしまう
1:人は「パターン」で動いてしまう
人はパターンで動いてしまう性質があります。
これを「固定的動作パターン」と呼び、動物学者が発見したもので、様々な動物の行動がしばしば固定的で自動的なパターンとして動いてしまうというものです。
例として挙げられているのが七面鳥の母鳥です。
七面鳥の母鳥はとても面倒見がよいことで知られていますが、この面倒見の良さはあることが引き金となっています。
それが雛達の姿形ではなくピーピーという鳴き声なのです。
動物学者のボックスさんが七面鳥の母鳥と、その天敵であるイタチの剥製を使って行なった実験によると、剥製のイタチを母鳥に近づけると怒って攻撃を仕掛けます。
しかしイタチに埋め込んであったテープレコーダーから七面鳥の雛のピーピーという鳴き声を出すと、途端に攻撃を止め自分の子供のように面倒を見だしたのです。
そしてテープを止めるとまた攻撃が始まりました。
ここからわかるのは、ピーピーという鳴き声で母性本能を制御されていると言うことです。
まるで母鳥の中にいくつかの行動パターンを録音したテープが入っているかのようです。
テープレコーダーのように「カチッ」とボタンを押すと「サー」っとテープが回って一定の行動が現れるのですが、この「カチっ」と「サー」に関しては、人間にも同じような行動が見られます。
心理学者のランがーさんが行った実験によると、理由を添えると頼み事が成功しやすくなるというものです。
図書館のコピー機の前にいる人に「すみません5枚だけコピーを使わせてくれませんか急いでいるので」と声をかけます。
この時「急いでいるので」という理由をお願いに添えると94%の人が先にコピーを使わせてくれたのです。
どうやら「ので」という言葉に反応して譲ってくれることがわかりました。
このことから私たち人間は「カチッ」というトリガーがあると「サー」っと自動的な反応をしてしまう特徴があるのです。
2:人は「恩」で動いてしまう
人は「カチッ」とスイッチが入ると「サー」っと行動してしまうことがわかりました。
さて、次に人が動いてしまうものそれが「恩」です。
これは、返報性のルールのことを指します。
よく知られる心理効果なので知っているかもしれませんが、返報性のルールとは他者から与えられたら自分も同じようなやり方で相手に返すように努めることを指します。
人間文化の中で最も広範囲に存在し、最も基本的な要素となっている規範の一つです。
この返報性のルールには、いくつかの特徴があります。
①返報性のルールは非常に強い力を持っている
普通であれば要求に応じないことでも、返報性のルールに影響を受けた状況だと応じてしまうと言います。心理学者によると要求を出してきた相手に対する好感度が要求を受け入れる傾向にどのような影響を及ぼすのか実験したところ、相手の好感度に関係なく借りを返さなければならないという義務感の方が勝ることがわかりました。返報性のルールの威力が非常に強いことが伺えます。
②望みもしない行為を最初に相手から受けた場合にも発揮する
相手が見知らぬ人または嫌いな人でも、最初にその人から受けた恩に対して1つくらいなら返してもいいと思ってしまいます。これは対象は関係なく、最初に受けた相手に返さなければならないと思ってしまうものです。たとえそれが余計なお世話であったとしても返さなければ気が済まないと言います。このように返報性にはとても強い力があり、これを利用したビジネスはすでに私たちの身の回りにあるのです。
3:人は「約束」で動いてしまう
人は返報性の力で動いてしまうことがわかりました。
さて次に、人を動かす武器が一貫性です。
これは自分が既にしてしまったことと一貫していたいという欲求のことです。
人間には一回でも決定したり、ある立場を取ったりすると、そのコミットメントと一貫した行動をとるような力が働くのです。
これはどんな仕組みなんでしょう。
その要素は、次の三つです。
- 一貫性を保つことによって社会から高い評価を受ける
- 一貫性のある行為は一般的に日常生活にとって有益である
- 一貫性を志向することで複雑な現代社会をうまくすり抜けるのに役立つ思考の近道が得られる
ある研究者が、たまたまそこに居合わせた人は犯罪を阻止するために危険を冒すのかを調べる実験をしました。
ニューヨークのビーチで偽の置き引き事件を行います。
ラジオを聴きながらビーチマットに寝ている人がラジオを置いたままその場を離れていきます。
そこで置き引き犯を装った研究者がラジオを盗みます。
この状況を見ていた人のほとんどは男性を呼び止めることはしなかったそうです。
20回中4回だけ人を呼び止めました。
今度は、ビーチマットを離れる時に「荷物を見ていただけませんか」と頼みます。
すると20人中19人が置き引き犯を呼び止めたので、この実験から何が言えるのかというと「それは commitment 」です。
つまり荷物の警備係になったことで一貫性つまり呼び止めるようになったのです。
まとめてしまえば、人間にとって一貫性を保つことはとっても便利なんです。
なぜなら、自動反応してしまえば考える必要もなく悩む必要もなく動けるからです。
以上を踏まえると人は一度コミットメントしてしまうと、それを一貫しようと頑張る生き物なのです。