4:人は「状況」で動いてしまう
人間を約束すると自動反応を起こして、勝手に動いてしまうことがわかりましたが、続いては、「状況」で動いてしまうについてです。
これを本書では「社会的証明」と呼びます。
社会的証明とは、人がある状況で何を信じるべきか、どのように振る舞うべきかを決める際、他の人々がそこで何か信じているかどのように行動しているかを重視して決めています。
これは特定の状況で、ある行動を遂行する人が多いほど人はそれが正しい行動だと判断してしまう心理のことです。
例えば皆さんも経験があるかもしれませんが、お笑い番組を見ている時、観客が笑ったり笑い声の効果音があったりすると、なぜかつられて笑ってしまったとかです。
社会的証明は次の二つの状況でよく現れるといいます。
それが「不確かさ」と「類似性」です。
特に、不確かさが重要なのでこちらを重点的に解説すると、人は自分の決定に確信が持てない時や、状況が曖昧な時は、他の人々の行動を見てそれが正しいと判断してしまいます。
心理学者のバンデューラさんは犬を怖がる3歳から5歳の子供達を選び、小さな男の子がいると楽しそうに遊ぶ様子を一日20分見せました。
すると8日後、その子供達は犬を可愛がったり一緒に遊んだりするようになったのです。
さらに映像でも同様の効果があると分かり、とりわけ効果絶大だったのがたくさんの子供たちが様々な種類の犬と遊んでいる映像でした。
つまり、多くの人々の行動がその証明を与えるとき「社会的証明」が最も機能したのです。
このことから人は自分で判断できない不確かな状況に置かれた時、自動的に他者の行動で物事を判断していたのです。
5:人は「好意」で動いてしまう
これまで「カチッ」とスイッチが入ると「サー」と動いてしまう特徴があることを述べてきましたが、そう考えると私たちは実に機械的な側面があることも分かります。
そして人は好意でもそのスイッチが入ってしまうんです。
著者は人は自分が好意を感じている人に対して、イエスという傾向があるといいます。
何故そうなるのかの要因について、「外見の魅力」そして「類似性」の二つを解説します。
「外見の魅力」とは、身体的な美しさは「ハロー効果」を生じさせて、その人の評価を底上げしてくれます。
ハロー効果とは、ある人が望ましい特徴を一つ持っていることによってその人に対する他社の見方がさらに良くなるというものです。
例として取り上げられているのが、1974年のカナダ連邦選挙は使った実験です。
外見の魅力的な候補者はそうでない候補者の2.5倍もの票を獲得したそうです。
つまり、有権者は外見で判断していたのです。
驚くべきは本人たちは自分が外見で判断をしたと思っていないことです。
無意識のうちに外見で判断をしていたことが証明されたのです。
もう一つの要因が「類似性」です。
私たちは自分と似た人に好意を感じ、その人の要求には何も考えずに「イエス」と言う傾向があるといいます。
一言で言えば、人は自分と似ている人を好きになるということです。
例えば、服装などが良い例です。
私たちは自分と同じような服を着ている人を好んで助けようとします。
1970年代初頭ヒッピーやストレートなファッションが流行しました。
この時、同じような格好をして電話をかけたいからお金を貸してくれないかという実験を行います。
服装が類似していた場合、3分の2以上の人が頼みを聞き入れてくれて、そうでない場合は半数足らずの人しか頼みを聞いてくれませんでした。
ここから人は、自分と類似性を持った相手に好意を抱くようになっていることが分かったのです。
以上を踏まえると、外見の魅力や類似性といった好意を与えると、人はスイッチが入って動いてしまうのです。
6:人は「力」で動いてしまう
人が好意を与えると動いてしまうということが分かりましたが、その反対に、力でも動いてしまいます。
分かりやすくいうと、とても忙しい時に、会社の社長からコピー取ってきてと言われたら、恐らくすぐにコピーを取りに行くのではないでしょうか。
反対に同僚や部下からコピー取ってきてと言われたら、今は忙しいから無理ってことあるんじゃないでしょうか。
これを社会心理学では「権威」と呼んでいます
権威者から命令されると、正常で心理的に健康な多くの人たちでさえ、自分の意思に反していても逆らうことなく服従してしまうというものです。
最も恐ろしいのは、危険なレベルの痛みでさえ他者に与えてしまうことです。
確かに権威者が優れた知識を持ち、能力も高いので従うことが当然と考えられますが、このような権威者に対する復讐は、短絡的な意思決定として思考が伴わない形で生じるんです。
つまり、「カチッ」「サー」の原理で自動的に動いてしまう傾向が強いのです。
心理学者ミルグラムさんが行った電気実験では、教師役と生徒役に分かれて教師役が問題を出し、生徒役が間違ったら電気ショックを流すという実験が行われました。
間違う事に電圧を上げて相手に苦痛を与えます。
実験が進むにつれ生徒役が目の前で情けや解放を求めますが、教師役は研究者の指示に逆らうことなく電気ショックを与え続けます。
実はこの実験には裏があって、実際には、電気は通っておらず生徒役たちは演技で苦しんでいたのです。
人は何の罪もない人に対して苦痛を与えるように指示された場合、どの程度までの苦痛を与え続けるのかを証明するための実験だったのです。
教師役の3分の2は、生徒役の懇願に一切耳を貸さず、電気を与え続けたのです。
この実験から何がわかったのかと言うと、人は権威を目の前にすると、何も考えることなくイエスと言ってしまうということです。
以上を踏まえると「権威」が持つ「カチッ」「サー」のスイッチの影響力はとても大きなものだったのです。
7:人は「珍しい」で動いてしまう
権利の力は、考える余地なく人を動かしてしまうことがわかりましたが、次の人を動かす要素は「珍しい」です。
実のところ人は希少性によって突き動かされてしまうのです。
これを「希少性の原理」と呼び、人は機会を失いかけると、その機会をより価値のあるものと判断する傾向があります。
よくあるのが、広告などで見かける「数量限定」や「期間限定」などの広告です。
販売する量や期間に限定を設けることで販売促進します。
では、何で人は希少性で動いてしまうのか。
これを「心理的リアクタンス」と呼びます。
心理学者ジャック・ブレーム氏が提唱したもので、自由な選択が制限されたり脅かされたりすると自由を回復しようとする欲求から人がその自由を以前より強く求めようとする心理のことです。
ネットショッピングで欲しいものを検索していた時、残りわずかという広告に思わず「ポチッ」としてしまったことの経験があるかもしれません。
そうです私たちは、選択肢を限定されるとさらに欲しくなっちゃうのです。
例として挙げられているのがロミオとジュリエット効果です。
コロラドに住む10代のカップル140組について調査した研究によると、親の干渉が強くなるとお互いの愛情が強くなり、反対に親の干渉が弱くなるとロマンチックな感情が冷めていったのです。
つまり選択の自由が奪われると思った瞬間に、「リアクト」という反発心が生まれてきたのです。
もしあなたが営業職であれば顧客の選択の自由を奪うことで成果につなげることができるかもしれません。
以上を踏まえると、人は選択の自由を奪われる希少性によって動いてしまうということです。
まとめ
これまでの解説で「カチッ」「サー」で人が動くことをお伝えしてきましたが、現代社会ではこの「カチッ」「サー」が、より強まっています。
現代は、科学技術の発展によって情報が溢れていて、選択肢が増え知識が爆発的に増えています。
そんな変化のめまぐるしい時代において、人は順応するのに一苦労します。
とりわけ意思決定に関して時代のペースが早いので、思慮深く考える時間がありません。
私たちの脳は頻繁に「カチッ」「サー」を行なっています。
- よくしてもらったから返さなきゃ
- 決めた以上はやりきらなければ
- 周りの人がやっているから大丈夫でしょ
- あの人かっこいいから信用できちゃう
- 社長が入っているから間違いない
- 残り1点だから、今、手にしないと
このように「カチッ」「サー」は何も考えることなく、思考停止のまま意思決定できます。
要するに脳にとって「カチッ」「サー」は都合が良くて非常に楽なのです。
そのため、現在は「カチッ」「サー」がより強くなってきており、まさに影響力の武器となっているのです。
以上を踏まえると、影響力の武器を理解して「カチッ」「サー」に「使われる」のではなく「使いこなす」ことで、変化のめまぐるしい時代を生き抜くことができるのです。
これらの点に気をつけて、是非、自分自身や働く会社の影響力を高めるようにしてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。