近年、月額定額制の「サブスクリプション」による提供されるサービスが増えています。特にアメリカだと2011年にサブスクリプションの市場が57億円だったのが、2016年には2600億円の規模まで拡大しているという調査もあります。今回は、サブスクリプション方式のビジネスモデルやサービスについて解説をします。
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サブスクリプション急拡大2つの理由
今、どんなサブスクリプションの会社が出てきているのでしょうか。日本では、まだ知られていないけれども、急成長している会社が数えられないほどあります。
私が、個人で加入しているサブスクリプションサービスを簡単に上げただけでも10個はありました。
- Hulu
- Amazonプライム
- dマガジン
- APPLE MUSIC
- カーシェアタイムズ
- 1Password
- Evernote
- Dropbox
- Adobe
- 会計ソフト
- スポーツジム
10個の加入は多いかもしれませんが、大抵、三つから四つくらいは加入している状況ではないでしょうか。何故、サブスクリプションが急拡大を続けているのか大きく理由は二つあります。
一つ目の理由は、所有の価値が薄くなったこと
これまで何か便利な生活をしようと思えば、物を購入して所有するというのが当たり前でした。服を買ったり、家電を買ったり、車を買ったりして、自分の所有物を増やすほど生活が便利になってきました。
しかし、本来、人々が欲しがっているのは物ではなく『体験』のはずです。家電屋さんで電子レンジを買うときに、電子レンジそのものが欲しいというわけではなく、自分の家で「素早く食べ物を温める」という体験が欲しくてお金を払っているのです。
その体験を得るために結果的に電子レンジを購入しているわけですが、別に、同じ体験を得られるなら、電子レンジじゃなくても良かったりするのです。
こう考えると、物を売っている企業というのは、本質的に物を売ることに価値は無くて、そのものから得られる体験に対してお金を払っていると言えます。
車を買ったけれども全然乗っていなかったら、駐車場代や維持費だけ払っていると勿体ない感じがしますよね。
私は、そう思って車に関しては、カーシェアのタイムズを長く活用させてもらっています。車って便利で使いたいときはあるのですが、ずっと自分が所有して、手元にある必要性っていうのはことではありませんからね。
他のサービスでで言えば、 Airbnbやメルカリなんかもそうです。Uberウーバーは家で眠っているだけの車をタクシーのように使えます。
Airbnb は空き部屋をホテルにメルカリはいらないものをすぐ売れるようにしました。
個人が、スマホ一つで様々な体験を得られるようになった昨今では、物を買って所有するというのは、選択肢のひとつでしかなくなってきているのです。
特に、ソフトウェアサービスの世界は、サブスクリプションサービスとの相性が良くて、最近、常識のような感じにもなりました。
ソフトウェアは、そもそも物理的なものではないので、シェアする必要すらありません。
プログラムとしてサーバーに置いておけば、世界中の人たちがサーバーにアクセスしてサービスを活用したりダウンロードしたりすることが出来ます。
世界中の何億人の人が使えるためエクセル・パワーポイントのような Microsoft Office 製品は、買い切りから月額制に変更していきました。
音楽もCDを購入するのではなく Spotify で聞くようになりました。大容量のファイルはハードディスクを買って保存するよりも、クラウドストレージの Dropboxのようなサービスに保存できるようになりました。
今や、このように、物の所有という意味がなくなっている流れは、月額で体験を買うサブスクリプションサービスを広める追い風になっています。
二つ目の理由は、意思決定を省略する価値が高まったこと
随分、前から言われていることですが、日々、大量に入ってくる情報の量は、脳で処理をするキャパを超えているとも言われています。分かりやすく言うと、情報量が多すぎて自分で選べないくらい選択肢が多すぎるということです。
だから、自分の代わりに最も最適な選択をしてくれるパーソナライズ(個人に応じて個別対応でサービスを変化させる)の価値が上がっています。
この動きは、ソフトウェアの世界では、比較的、前から当たり前のように動いていました。
Google の検索結果や出てくる広告の内容も違います
YouTube に表示されるおすすめ動画も人によって違います。
そういう点で言えば、今、意思決定を省略する価値と言うのは、知らない間に、どんどんと上がってきているのです。インターネットサービスの世界では、個別に合わせてサービスを提供するというのが常識になっています。
この、パーソナライズの流れは、オンライン上だけでなく、現実のビジネスにもおいても自分に合わせてサービスを提供してくれるというスタイル重要視されています。
例えば、自分の好みに合わせた服を送ってくれるファッションレンタルサービスや、ブランド物をレンタルしてくれるサービスなどもあります。
このサブスクリプションビジネスで重要なのは、顧客の時間(活用頻度)をどれだけ獲得することが出来るのかと言うことです。そうでなければ、月額に負担する金額が高いとなって解約に繋がるからです。
更に、その上で、個人の最適化をさせるためには、使い続けてもらうことが重要です。使い続けてもらわないと、個別情報のデータが取得出来ないからです。
このビジネスモデルは、単発購入では出来ません。サブスクリプションのサービスでないとダメなのです。サブスクリプションであれば、使えば使う程、自分に合った使い方や物を教えてくれて、意思決定の必要がなくなる価値を提供してくれます。
サブスク利用による5つのメリット
- 余計なものを持たなくても良い
- 利用開始のハードルが下がる
- 放題系なら使うほどお得になる
- 手間が省けるから多忙な人向け
- 不要になったらスグ解約できる
余計なものを持たなくても良い
昔なら音楽や動画を見る為には、CDやDVDを購入するか、レンタルするかと言ったサービスしかなかったが、サブスクなら膨大なコンテンツを一気に楽しめます。
定番の動画配信のVODでAmazonプライムやHuluなんかもあるが、ファッション好きな人とかなら、「メチャカリ」というファッションレンタルでコーディネートを楽しみながら多くのファッションを楽しむことも出来ます。
利用開始のハードルが下がる
「購入する予算がない」「購入して失敗したくない」という気持ちは誰にでもあるわけで、しかもそれは高い商品であればある程、そのニーズは強く発生します。
愛車サブスクの「KINTO」や高級腕時計「KARITOKE」などでは、高級商品を利用することへのハードルを下げて取り扱うことが出来ます。体験的に扱ってみるのも良いかもしれません。
放題系なら使うほどお得になる
音楽・動画配信サービスの他「1日1杯野郎ラーメン生活」のような特定のファンに向けた放題系も多数あります。
月額制サービスが多いため、多く利用すればするほど1回あたりの単価も下がるので、格安でお得に食べ放題が出来るようになります。
手間が省けるから多忙な人向け
これからのビジネスのキーワードで「時短」というのは、大切なキーワードになります。人々の時間が貴重になり、忙しい現代人には様々なサブスクが存在します。
スーツの手入れや保管をしてくれる「着るダケ」や食材キットで食事の献立を提案してくれる「Oisix」コンタクトレンズの定期便「メルスプラン」などがあります。
不要になったらスグ解約できる
モノを購入すると、いざ不要になったときに処分するときに困ります。特に、家電とかなら別途費用とか掛かったりするのが今の時代です。
サブスクなら解約するだけで商品を返却・サービスを停止するだけでOKです。「使ってみたけど、思っていたのと違った」という後悔のキズもそこまで深くないので気軽に使いやすいです。
海外のサブスクリプションサービス
最近は海外でも多くのサブスクリプションサービスが登場していて、どこも急成長しています。インターネットの完結だけではなく、オフラインも絡めて良質な体験を提供しているサブスクリプションサービスを紹介しましょう。
Zenamins
ゼナミンズは、ユーザーが生活習慣に関する質問にいくつか答えるだけで、最適なサプリメントの詰め合わせを配送してくれるサービスです。サプリメントは、結構どれを選んでいいのかわからない分野なので、最適な選択をしてくれるサービスとしては良いと思います。
PELOTON
ペロトンは20万円以上する家庭用トレーニングバイクを使ってサービスを提供しています。単純に高額商品を販売しているだけではなく、月額4000円の動画コンテンツサービスも提供しています。
このトレーニングバイクを使って、オンライン上で、他の人とも繋がって自分の順位を見ながら楽しくトレーニングが出来るそうです。
ペロトンは、この動画コンテンツから得られる体験に力を入れているのでしょう。この動画で急激に売り上げを伸ばして、今では時価総額1000億のユニコーン企業になって今年、上場申請をしました。
Trunk Club
男性にとってお店に足を運んで洋服を買うのは、結構、面倒くさいと感じる人もいます。
多くの男性が感じるこの煩わしさを解消するためのサービスとしてコーディネートを提供しているのがTrunk Clubのサービスです。このサービスでは、個別に合わせて洋服を配達してくれます。
Just the right book
自分のプロフィールを入力すると、その情報を参考にして専門家が、おすすめの本を厳選して自宅に送ってくれるサービスです。
こちらからメールや電話で要望を出して、配達してほしい本を配達してもらうことも可能です。
Dollar Shave Club
「Dollar Shave Club」は1ドルと送料を支払うことで、カミソリが定期的に届くサービスです。
洗顔料やローションなどのスキンケア用品も揃っているそうです。カミソリとシェービングクリーム1本が入って届けられます。
https://www.dollarshaveclub.com/
The Tie Bar
仕事でスーツを使う男性にとっては、毎日同じネクタイは嫌だと言う人に向けて、ネクタイのサブスクリプションサービスがあります。
6ヶ月の間に、最初の3か月で3本、残りの3ヵ月で3本が配送されて99ドル(約10,000円)となります。
シャツや靴下、パンツ、ポケットスカーフなども合わせて販売しているそうでトータルコーデイネートも提供してくれるそうです。
https://www.thetiebar.com/
このように、実際に伸びている会社の事例を見ると、オフラインでもサービスのサブスクリプション化が進んでいることが分かると思います。
サブスクリプションの注意
注意しないといけないのが、間違ったサウスクリプションの利用をしなければいけません。サブスクリプションサービスで多くの人が、結構やりがちな誤解もあります。それは、単なる月額課金に消費してしまっているケースです。分かりやすく、二つの事例を上げながらお伝えしましょう。
単なる大量消費のサブスクリプション
まず一つ目は、単純に使いまくりたい人だけが、使うサブスクリプションサービスです。例えば、吉野家の牛丼で月額1万円から牛丼が食べ放題というサブスクリプションサービスがあったと仮定しましょう。
いくら吉野家の牛丼が好きでも、毎日、食べたい人にとっては良いかもしれませんが、普通の人は月に1万円も吉野家で買わないですよね。
そもそも食べ過ぎは、体にも良くないと考えた場合、月額課金にする人と言うのは、そこまで多くないと思います。単純に食べ放題サービスと変わらないって感じですね。
このように、消費したいものを月額で使い放題にしても、あまり意味がありません。熱狂的なファンなどは別ですが、普通はあまり意味がありません。
単なる分割払いのサブスクリプション
二つ目は、分割払いと大きく変わらないサブスクリプションです。月額3000円でベッドのマットレスが使えるサービスがあったとしたらどうでしょう。最初に何万円もの高額を支払わなくていいのは良いかもしれませんが、絶対に欲しいとはならないと思います。
月額支払いが増えるのも嫌だし、自分のものではないので他人にあげることも、ネットで販売することもできません。
そういう意味では、物を月額で貸し出すというのは、単純に一括購入を分割払いにしたのと大差ないことになります。
やはり、価値の高いサブスクリプションサービスは、先ほどもお伝えしたパーソナライズになるでしょう。先ほどのビジネスに、パーソナライズを取り入れるとどうなるでしょうか。
牛丼の食べ放題でも、自分の健康状態とか好みによって、その都度、自分に合った違うメニューが出てくる形でサービスが受けられたら良いと思いますよね。
もっと野菜とか、ヘルシーなメニューも出して、個別の適正に合わせて提供してくれたら良いかもしれません。
単純にビジネスをこのようにしたからと言って、成功するとは限りませんが、単なる月額課金制のサービスではなく、個別に適したパーソナライズを取り入れることでサブスクリプションは新しい体験を作り出すこと出来るということです。
大手も進めるサブスク改革
これまでお伝えした内容から、サブスクリプションビジネスの成功の裏には、プラットフォームになるサービスを提供していることが大切だということが言えると思います。
日本でも、これから続々とサブスクリプションビジネスは生まれてくると思います。着目すべきは、月額でお金をもらうことで、ただ単に物を渡すだけじゃできない「新しい体験」を提供しているというところです。
良い物を売る会社は、所有するという価値が薄くなっていきます。そういう意味では、既存の販売で売り上げを立てている会社などは、体験を売る会社にシフトしていかないといけません。
「良い物を作っていれば、物を買ってくれる」という固定観念にだけ囚われていると、今後のビジネス社会に淘汰される可能性もあると思います。
トヨタの改革が凄い
今、物作りと販売の企業から、変革を成そうとしている企業があります。昨今のサブスクリプションの流れの影響を受けて、100年に1度と言われる変革に迫ろうとしています。
それが、日本で時価総額1位のトヨタ自動車です。
トヨタ自動車は、今後、体験を売る会社にシフトしようとしています。トヨタの豊田章男社長は2018年5月に、自動車を作る会社から、モビリティカンパニーへとモデルチェンジしていくと発表されていました。
モビリティカンパニーというのは、これまでの自動車販売の会社ではなく、人の移動を支えるサービス企業になっていくということです。 TOYOTAが発表したコンセプトの一つに「e-Palette(イーパレット)」という革新的なものがあります。
e-Palette=出典:トヨタプレスリリース
この「e-Palette(イーパレット)」は、自動運転電気自動車で、これまでのように個人が車を購入して、乗るという考え方ではありません。
分かりやすく言えば、町中にイーパレットという車が走っていて、これをスマホアプリから呼び出し、タクシーとして活用したり、傘を販売したり、時にはアイスや帽子を販売したりする場所になったりするのです。
このイーパレットが汎用的に使われることを想定したプラットフォームを作ろうしているらしく、個人的にはとても凄い構想だと思いました。
また、この車を企業や個人が購入して、自動運転車として貸し出してタクシーのように活用して収入を得ることも想定できますし、美味しいお弁当を販売する移動販売車にすることも可能だと思います。
さすがは、時価総額24兆円の日本一の会社トヨタは、社長のリーダーシップもあって、体験を売る会社にシフトを始めたということです。世界を股に掛けてグローバルで商売をしている会社は非常に動きが早いです。
しかし、他の会社はどうでしょうか。
今の、サブスクリプションビジネスの動きについていけてない会社も多く存在している感じもします。
今、物を売って所有してもらうことを前提にビジネスをしている会社も、何かしらの『体験』を売るビジネスモデルを見出して行かないと淘汰される時代が来るかもしれません。
物売りと、体験売りの住み分け
今は、家電や洗濯機は買うのが当たり前になっていますが、もし、洗濯物を毎日、回収して綺麗にその日の夕方に送ってくれるホテルのようなサービスがあったら、誰も洗濯機を購入しなくなりますよね。
洗濯機が欲しいわけではなくて、綺麗にクリーニングされた服を、毎日快適に着るという体験にお金を払っているからです。
このように、長期目線で考えたら、いつまで購入をするのだろうって疑問を感じる物って出てきたりします。ただし、今後、全ての所有の価値が失われることではありません。
例えば、宝石や時計をコレクションするのが好きな人にとっては、宝石や時計をサブスクリプションでサービスを受けても意味がありません。
この場合は、そもそも自分が所有することに価値があるので、クラシックカーが人気なのと同じように、所有することで生まれると価値も残り続けるはずです。
ただ、いまは体験できればそれでいいはずなのに所有をしている人が、多いので総体的には所有をする人が少なくなっていくということは間違いありません。
まとめ
今回のお伝えしてきた内容を簡単にまとめると以下の感じになります。
- 世界のサブスクリプション化が進んでいる。
- 理由は所有の価値が薄くなって、意思決定を省略する価値が高まったから
- 単なる月額課金にしても価値はない
- パーソナライズで新しい体験を作りだすことが重要
- 今後は『体験』を売る会社が生き残る
これからのビジネスは『体験』の時代です。物の所有価値が相対的に下がって、体験を得るための一つの手段でしかなくなります。
この流れは、ネットが普及していった現代においては、不可避となる世界です。これらを前提にして、自分がこれからどのようなキャリアを積むのか、どんな仕事をするのかを選択できると楽しく後悔のない日々を送れるのではないでしょうか。
大切なのは、本当に必要なサービスかどうかを見極めてから始めましょう。
私の場合、サブスクだけの登録が一方的に増えない様に、定期的に見直すようにしています。
また、1つ契約したら1つ解約する位の形で月単位でサブスクで支払う費用を一定の金額に収まるようにしています。
このように、手軽にサービスを受けられる一方、月額費用が散財の形にならないようにだけは木を付けて楽しくサブスクサービスを受けて下さい。
今回も最後までお読み頂きありがとうございました。
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