JR東日本がデジタル通貨の基軸デジタルマネーに向けて協議会を発足。今後の金融サービスと情報技術を結びつける革新的なフィンテックの今後について解説していきます。
国内のデジタル通貨の現状
デジタル通貨と「スイカ」連携、3メガ銀・JR東など検討
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO59898130S0A600C2MM8000?s=4
日本経済新聞
デジタル通貨というのは、欧米や中国では準備が進む一方、日本国内では買い物の決済などに使う電子マネーなどのサービスが乱立している状況です。
今後、日本がキャッシュレスを推進していく上で、国際送金などでも広く使えるデジタル通貨などのことをフィンテック(金融技術)と呼ぶのですがこれらの技術を用いて、乱立した電子決済の相互乗り入れをしやすくしたり、ブロックチェーン(分散型台帳)を活用して安全性を高めたりする方向性が検討されています。
そして、最終的には、日本の法定通貨である「円」自体を電子化するデジタル基軸通貨の構想も見据えています。
現時点では、2020年の秋に、デジタル通貨協議会の発足されることになります。
この協議会では、国内にある数多くの電子マネーを統合または、相互利用することが出来るかの協議を行います。
協議会への参加意思を表明しているところと、表明をしていないところ、そして、国としての現時点での立場などを整理しながら各々の思惑を考えていきましょう。
参加表明をしている企業は、JR東日本を中心とした国内の仮想通貨交換業者などです。銀行系では、みずほ銀行が参加を表明し、通信系ではDOCOMOとAUが表明をして、流通系ではセブンアイホールディングスになります。
一方、参加表明をしていない企業としては、基本的にIT系の企業となり、自分たちでデジタル通貨の覇権を自らの企業で狙いに行っているところに感じます。
国や各省庁の立場の立場としては、この協議会に対しての発言権や議決権はありませんが、オブザーバーとして、金融庁、財務省、総務省、経産省、日銀などが参加することになっています。
電子決済を活用する消費者の立場としては、現在、電子マネーだけでも多くの種類が乱立している状態で、とても不便な状況です。
上の資料は、今の電子マネーのカオスマップですが、非常にわかりやすいので参考にしてみてください。
今の環境だと、これら全ての電子マネーを全部スマートフォンの中に入れておかないと使い勝手が悪い状態で、店舗などによって、ここはD払いとか、ここはauペイで支払いを求められたりでとても面倒臭いです。
これらの電子マネーの乱立というのは、あくまでも企業側の都合だけであって、今は、各事業者が顧客を囲い込んでいる状況でチャージしたお金を払い戻すことが出来ないように規制の縛りなどもあります。
その点では、ユーザビリティ(使いやすさ)は非常に悪く、消費者の立場からすると、とても使い勝手が悪い状況が続いています。
これらの問題を解消して、統一された電子マネーに向けた道筋を作るのがデジタル通貨協議会になります。
最有力候補のJR東日本Suica
現時点では、JR東日本が発行しているSuica(スイカ)は、鉄道利用者などの保有率が高いことから発行枚数が8000万枚に達しており、デジタル通貨協議会ではSuicaを最有力候補として、すべての支払い決済や送金などの手続きを統合して出来ないかを協議しています。
Suica(スイカ)を基軸通貨として扱うことが出来て、スマートフォンの中にみんながSuicaにチャージして、みずほのJコインペイ や、ドコモのd払い、auのauペイなどと交換することが可能になれば消費者にとっては便利になります。
2019年の10月に消費増税が導入されて、キャッシュレス決済のポイント還元制度を追い風に、スマホ決済の利用者が急増して、非接触IC型(Suica系)の決済と、QRコード決済(ペイペイ)が昨年からシェアの取り合いをしている状況です。
これらのことから、デジタル通貨協議会への参加を表明していないIT系企業としては、大判振る舞いのキャンペーンなどを展開してユーザー数の拡大をしているのは、Suicaに変わって自分たちが最有力の候補として名乗りを上げたいために、頑張っている状況が続いています。
暗号資産とデジタル通貨について
現在、日本国内では暗号資産と呼ばれていますが、暗号資産というのはデータ上の資産のことを意味しており、1番代表的なものとしては個人情報などがあげられます。
個人情報と言うのは個人情報保護法で守られるべきデータ上の資産と言うことで、WordやExcelなどのデータでも、価値のあるものが記載されていたりすれば、全てデータ上の資産と言うことになります。
これら全ての価値あるデータをそのまま保存する時もあれば、一回、暗号化して資産として保存する場合もあります。
データ上の資産→暗号化→暗号資産
このようにデータ上の資産を暗号化したものを「暗号資産」と呼びます。
そのため、暗号資産=仮想通貨と言うわけではなくて、暗号資産と言うものはたくさんあって、暗号化された個人情報や暗号化された契約書など、たくさんありますがその中の1つが「仮想通貨」と言うことになります。
欧米では民間や中央銀行の間で、本格的なデジタル通貨を導入するための準備などが進んでいて、米国のフェイスブックは2019年6月に「リブラ」を発表しています。
しかし、通貨の役割を果たす役割として仮想通貨そのものが注目を集めているのは、事実ですが各国の政府が、仮想通貨そのものを認めたくないと言う事実もあります。
過去に記事にしているのもあるので気になる方はご覧ください。
ここまで、仮想通貨の扱いに対して各国の政府が嫌がるのかを説明すると、通貨発行権と言うのは国家権力の源としても扱われているため、民間や個人が通貨として扱えるものを作れるようになることは、国家権力が弱くなるため、その存在に脅威を感じているわけです。
これは、日本国内でも同様で、国からしたら通貨と言う言葉を使いたくないが故に、暗号資産と言う呼び方をしているともいえます。
個人的には、中国でも国内の一部地域では「デジタル人民元」の実証実験を進めているので、最も早く国家のデジタル基軸法定通貨として運用を始めるのは政治的に考えても中国のような気がしています。
BTCが基軸通貨に成りえなかった理由
本当は、ビットコインなどの仮想通貨がこれらの共通の通貨として活用されることが期待されていましたが、2020年の現時点ではそこまでの活用がされていません。
その理由の一つとして、ブロックチェーンなどの技術的な問題があげられます。
ビットコインに使われているブロックチェーンの技術は、安全性が高く革新的と言われていますが現時点では、効率性に問題があるとされています。
安全性を高めると、どうしても効率性が下がってしまう。
効率性を高めると、どうしても安全性が下がってしまう。
このようなことが起きてしまいます。
クレジットカードなどのビザやマスターの場合は、取引処理の速度が1秒間に2000回位は可能なのですが、ビットコインの場合だと、1秒間での取引件数が7件になります。
今後、ビットコインを超えるブロックチェーンの技術で実現していく可能性というのはありますが、2020年の今の時点ではビットコインでは取引処理の速度が遅いため基軸通貨の役割を担えるまでの技術としては難しいと言わざるをえません。
もし、今回のデジタル通貨協議会において、Suicaを基軸の電子マネーにしていこうと言うことが決定していった場合、日銀のデジタル日本円の構想につながっていくかもしれません。
そうなったらお金と言うものが完全に電子上のデータだけでやりとりが可能になり、マイナンバー等の管理と紐付けることによって税金のやり取りやマネーロンダリングなどの不正防止が可能になります。
まとめ
いろんな分野でいろんな新技術というのが出てくるわけですが、その中で私たちの生活に大きく影響を与えるのがフィンテック金融技術と言われています。
その代表がブロックチェーンであり、デジタル通貨協議会の中においてもブロックチェーンの技術をいかに活用することができるのかが協議されていきます。
今回のニュースのまとめとしては、これから発達していくフィンテックに対して、なぜSuicaが基軸電子マネーに使われようと検討されているのか、また、ビットコインなどの仮想通貨では、なぜその基軸電子マネーとしての役割を果たすことができないのか、フィンテックの基礎的な原理原則の理解が重要になります。
細かいプログラムや専門的な知識は必要ないにしても、お金を学ぶと言う事は、金融技術についても学ぶということが大切です。
今後、お金のことでどういうことが起きるのか、何が問題視されているのかを知ることで、未来予想も立てやすくなり、ビジネスでお金を増やすことや投資などに役立ちます。
投資の判断基準なども、金融技術の違いを理解することが大切になるので、これからのお金の勉強は、お金に対する技術を学ぶことだともいえます。
今回の話から、皆さんの金融技術への関心が少しでも高めることが出来たら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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