ブロックチェーンの技術は暗号通貨だけではなく、様々な業務・業界に応用することで、これまで実現不可能だったことへの可能性が大きく広がると言われています。その中でも「スマートコントラクト」はについての解説を行っていきます。
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「スマートコントラクト」って何がスゴイの?
現在、ブロックチェーンで注目されている機能が、イーサリアム・ブロックチェーンに実装されている機能が「スマートコントラクト」です。これにより、ブロックチェーンは様々な分野に応用できると大いに期待を集めています。
スマートコントラクトの概念としては、ブロックチェーンから生まれたものではなく、ブロックチェーンの前から存在していました。
スマートコントラクトをカンタンに説明すると「自動販売機」になります。
「利用者がお金を入れる」そして「飲みたいジュースのボタンを押す」すると「自動販売機からジュースが出てくる」この一連の流れを「利用者と自動販売機が契約した結果」と考えると「お金の投入とボタンの選択」契約行為であり、この行為が行われたときのみ自動販売機はサービスの提供に入ります。
つまり、スマートコントラクトは「ある行為に紐付いた結果に至るまでの契約行為を自動化」するためのものと言えます。イーサリアムのブロックチェーンにはこの仕組みが搭載されています。
そして、これによってもたらされるサービスの恩恵は計り知れません。会社や顧客間での契約は従来、多大な労力と時間が必要でしたが、スマートコントラクトを使えば、それを自動化できるのですから、大幅な効率化とコスト削減が期待できます。
どんなビジネスで活用されているのか?
メガバンクがブロックチェーン導入
USC(ユーティリティー・セトルメント・コイン)というプロジェクトがあります。このプロジェクトは国際的な銀行がブロックチェーン上の「担保付資産」を利用して、お互いに様々な取引を容易に行うことを可能にすると計画とされており、スイスの大手銀行グループが主導する「ブロックチェーンを使って新しい金融決済の確立を目指す」プロジェクトのことです。
2015年にスタートして、世界の銀行大手が名を連ねる一大プロジェクトで、2017年9月には、日本のメガバンク筆頭である三菱UFJ銀行も参加を発表しています。
このプロジェクトで三菱UFJ銀行が目指すのは、従来の銀行間決済は、日本銀行(日銀)などの中央銀行を介して行われてきましたが「中央銀行を介さずに決済を銀行間で行う」ことを目的としています。
たとえば銀行口座の異なる個人や企業間が送金を行う場合、日銀はその帳尻を合わせるため、各々が持つ日銀口座から資金移動を行います。この仕組みをブロックチェーンが代替するもので、実現すれば銀行間決済を大幅に効率化するとされています。
同時に三菱UFJ銀行は、個人や企業向けの国際送金サービスにも着手して、2020年の今年から本格的な運用をスタートさせる予定でもあります。
また、個人間の送金では、SBIホールディングスが、リップルのブロックチェーンを金融基盤にしたスマートフォンアプリ「Money Tap」を利用して市場を拡大もしていっています。
このサービスは、参加する銀行間であれば、口座番号を必要としないで、携帯番号やQRコードを利用して24時間365 日送金が行えるというものです。
ブロックチェーンの送金サービスへの応用は早期から期待されていましたが、現在、このように様々な銀行がサービス提供をスタートさせています。
「食の安全」に ブロックチェーンを活用
2017年3月、東京・六本木で開催された野菜市「ヒルズーマルシェ」に出店し、「ブロックチェーンを使って第三者機関なしに野菜の安全性とブランドを保証する」という実証実験が行われました。
これは宮崎県綾町とのコラボにより実現したもので、野菜の1つ1つ に、QRコードとNFCタグが付け、それをスマートフォ ンで読み取って購入者は「生産者」や「収穫の時期」「農薬使用の有無」などを確認することができます。
つまり、ブロックチェーンには「野菜の生産履歴」が保存されているのです。
その結果、ブロックチェーンによって産地偽装などを不可能にして安価なサービスを提供するだけでなく、野菜に関する多くの情報を可視化することで、野菜の個性や生産者の拘りなども購入動機になります。
ユニークなところは、ブロックチェーンの構成にもあります。それは、情報の正当性をシビラが独自開発したブロックチェーン「Broof」(トレーサビリティとスマートコントラクトを両立するプラットフォーム)と 世界最先端の電子国家エストニアのインフラを支えるGuardtime(ソフトウェアや情報も対象としたサプライチェーン)が自開発ブロックチェーン「KSI」(カレンダーブロックチェーンにより時間の経過と共に自動的に付与される)という2つのブロックチェーンを組合せて実現していることです。
いわば「2段構えのブロックチェー ン」によって、より改ざんに強い環境を構築しています。このような「食の安全」ヘブロックチェーンを活用する動きは、現在、急速に進化して活用されています。
宅配ボックスの施錠/開錠に ブロックチェーンを利用
2017年セゾン情報システムズが開発した「ブロックチェーン技術を活用した宅配ボックス」の実証実験がスタートしました。宅配ボックスは顧客の購入商品を 保管しておくもので、認証は商品購入者のスマートフォンから行います。
ブロックチェーンは「ユーザー認証」や「解錠・施錠」の官理をはじめ、「納入・受領記録」を担うのが役割です。これにより顧客が「いつでも、どこでも商品を購入でき、好きなところで商品を受け取れる」システムの実現を目指そうとしています。また、システムは汎用性が高く、さまざまな宅配業者が配達を行うシェアリング型宅配ボックスへの採用も可能だといいます。
現在、実証実験の段階であるため利用はできませんが、これが広が れば誤送や盗難のリスクを削減することができ、さらに昨今問題視されている、宅配業者の過剰サービスの見直しにも寄与することでしょう。
ブロックチェーンで 民泊運営を自動化
シェアリングエコノミーの浸透から、民泊にも大きな注目が集まっています。Airbnbなどのサービスを利用したことがある方もいると思いますが、サービスが先行する海外では、旅行者が宿泊先に民泊施設を選ぶことも珍しいことではありません。
一方、日本でも民泊ビジネスが行われていますが「ホスト登録・申請」や「宿泊者の管理」や「鍵の受け渡し」などの作業工程による「安定したサービスフローの確立」にまだまだ改善の余地があると言われています。
2018年の6月に民泊新法の施行が行われ、2020年の今年の東京オリンピック開催により、訪日外国人も日増しに増える現状を考えれば、ホストとゲストにとって安心な環境を構築するのは重要な要素だといえます。
大きく期待を集めているのが、不動産管理会社・シノケングループの「IoT民泊システム」構築の試みです。このシステムの基盤技術になるのが、シノケングループとチェーントープが共同開発したブロックチェーンです。
このブロックチェーンでは、データ改ざんが 実上困難とされるセキュリティや機能を活かし「鍵の解錠権を持つ利用者の証明」「解錠権の移管」さらに「民泊施設の検索・申込みから、宿泊、利用終了までの自動化」を行おうとしています。
このサービスが確立されることで、ホストは安心してサービスを提供を行うことができるようになり、お客はスマートフォンのみで申し込みから施設の開閉までを行うことができるようになります。
膨大な不動産情報も ブロックチェーンで一本化
情報を時系列でつないでいくブロックチェーンは、「散在する情報の一元化」する特性をもつメリットがあります。不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S(旧ホームズで知られるLIFULLは現在、ITソリューションベンダーやブロッ チェーン開発会社との協業により、プライベートチェーンを用いて 「不動産情報の一元化」の実証実験を行っています。
従来の不動産情報はこれまで、不動産に関する登記や住所、所有者、納税者などの情報がばらばらに管理され、かつその情報の透明性においても、すべて明らかだとはいえない状態にありました。
また、近年の空き家や所有者不明の不動産問題も、早急に解決すべき深刻な課題として認識されていました。LIFULLが行う不動産情報の一元化は、これらの改善に寄与するもので、散在している不動産情報をブロックチェーン上に紐付け、情報の一元化とともに、閲覧催限や所有権の移転などをスマート化し、透明性を高めようとするのです。
さらに、将来的には政府・自治体が進めている不動産登記のオープンデータや登記簿、マイナンバーなどの情報とブロックチェーンの接続を行い、あらゆる情報の一元化から不動産にまつわる社会的問題にも取り組もうとしています。
また、今回の実証実験はLIFULLのみの試みですが、その有用性が明らかになれば、複数の民間業者間でブロックチェーン環境による情報の共有・利用を行っていくとしています。
電気もブロックチェーンで 取引する時代
ドイツでは、再生可能エネルギーへの注目度も非常に高く、街の至る場所でソーラーパネルを設置した民家を見ることができます。
また、電力の地産地消に対する意識も高く、使用分の電気を太陽光発電でまかない、余った分を売却する「プロシューマー」と消費者との直接取引の場に対する期待も高まりを見せています。
この動向にいち早く着目したのが、ドイツの大手電力会社、イノジーです。同社は、2015年よりP2Pネットワークによる電力取引のプラットフォームやブロックチェーンを活用した取引などの有用性を実証する事業を推進しています。
事業の立ち上げは、東京電力ホールディングスとの共同で行われていて、かつ東京電力は出資からコンジュール社の30%の株式を所有しています。
つまり、この事業の有用性が実証されれば、日本においても同様のプラットフォーム・サービスが提供されるのは明確で、事実、東京電力は「国内での事業展開も視野に入れ、当事業からブロックチェーン活用のビジネスモデル構築とサービス運用の知見を獲得していく」と発表しています。
http://conjoule.de/de
現状の日本では、太陽光発電などから得た余剰電気の売却は、電力会社や小売電力事業者に限定されますが、近い将来、家庭で作った電気を別の家庭に直接販売できる日がくるかもしれません。
まとめ
今回は、6つの業界と分野で活用が進められているブロックチェーンとスマートコントラクトのビジネスを紹介しました。
2020年には5Gのサービスも開始されると言われている中で、ブロックチェーンとスマートコントラクトの技術革新にも大きく期待が寄せられます。
今年中に大きく飛躍するのかと言えば、難しいかもしれませんが、長期的な目線(5年、10年規模)で見ると途轍もない規模での価値を見出すと思います。
様々なメディアや専門家も意見が出ています。今回の記事でご紹介したブロックチェーンの使い方は、実験的なものもありますが、現実的な活用は間違いなく近づいています。
また、次回、ブロックチェーンについて他のビジネスについても紹介したいと思います。
最後までお読みいただいてありがとうございました。
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